千葉県市民オンブズマン

千葉県住宅供給公社(20億円貸付の返還・差し止め)に関する、県知事への住民監査請求

趣旨: 堂本知事は、破綻状態にある千葉県住宅公社へ20億円の貸付金議案を議会に提案、議会が賛成多数で可決し、半額の10億円を予算執行した。従って千葉県市民オンブズマンは10億円の返還と残額10億円支出の差し止め請求する。請求者は20名、柏市民オンブズマンはその内の5名の参加をお願いされる。柏市民オンブズマンは三田村・信太・石蔵・三原・他1名の計5名の同意を取り、千葉県オンブズマン連絡会議に回答する。千葉県オンブズマンは県議会開会前の2004年3月3日をめどに請求し、住民訴訟まで持ち込む決意で行う。




千葉県住宅供給公社への貸付金返還等監査請求の経過
日  付 出来事 関係資料
平成16年
2004年 3月 9日
県監査委員への監査請求 監査請求書 
東京新聞 (2004年3月10日) 
朝日新聞 (2004年3月10日) 
その他の新聞 (2004年3月10日)
平成16年
2004年 4月 7日
県監査委員への意見陳述  
平成16年
2004年 5月 7日
監査請求の棄却 監査結果(前半) 監査結果(後半)
平成17年
2005年 6月 7日
第2回弁論 ①被告を千葉県知事一人に
②請求金額を17億円に訴状を訂正(千葉県はその後7億円の追加支出を行った事、また公社の理事長は住民訴訟の対象にならない事、等の理由による)





平成16年3月9日

 

千葉県監査委員 殿



千葉県職員への措置請求書

 

監査請求の趣旨

千葉県知事が、千葉県都市部住宅課職員をして千葉県住宅供給公社に違法に貸付支出した、又、支出しようとしている金員に対して、前者は貸付金の返還請求、後者は支出差し止め措置を求める請求。


監査請求の経緯と要旨

平成15年9月の千葉県議会は、千葉県住宅供給公社(以下「公社」と言う)への貸付金議案予算額20億円を賛成多数で可決承認した。

千葉県知事は、この予算執行について議会の承認が得られたとして、千葉県都市部住宅課職員に、平成15年12月3日予算の半額10億円の金員を、公社に支出を命じ、千葉県都市部住宅課職員に執行支出させた。

前述の支出執行して間もない平成16年2月4日、請求人等は、事実上の倒産である公社特定調停の新聞報道に接し、前述の貸付金が戻らない可能性が大であると判断した。

公社の乱脈経営は、既に先の知事監査請求に対応する監査結果報告で十分明らかにされており、今日の状態は、誰が判断しても倒産状態にある事に異論がある筈がない。にも係わらず経営内容無視の貸付執行は、迂回補助金支給の転化に他ならず、迂回予算提出は、千葉県議会提案趣旨を欺き、県税搾取に匹敵する重大な違法、背信行為と言っても過言ではない。


監査請求人等の請求理由

因って、公社は、財務内容を全面開示する事なくして、貸付金、補助金等を受ける資格は無い。又、千葉県も財務内容の確認なくして、貸付金、補助金等を支出する事は、千葉県が県税使途管理権を放棄すると言う法令違反を重ねる事になる。ここに、請求人等は、地方自治法第242条の2第1項の規定による、千葉県知事、及び都市部住宅課職員に対して、貸付金の返還請求、貸付予定行為を差し止める緊急勧告を求めるため、別紙事実証明書を添え、住民監査請求による必要な措置を請求するものです。


請求人の住所氏名(省略)



監 査 第 3 4 号
平成16年 5月 7日

 

措置請求人  各位

 

千葉県監査委員 山下 重毅
千葉県監査委員 井村 雅一
千葉県監査委員 田久保尚俊
千葉県監査委員 高橋 照雄







     

千葉県職員措置請求の監査結果について(通知)

 

平成16年3月9日及び3月19日付けで受け付けた地方自治法(昭和22年法律第67号。以下「法」という。)第242条第1項の規定による千葉県職員措置請求(以下「本件請求」という。)について、別記のとおり決定したので、同条第4項の規定により通知します。




別記





第1

結論

本件請求を棄却する。



第2

請求書の概要

措置請求人(以下「請求人」という。)及び提出日(受付日)

請求人及び請求書の提出日は、別紙のとおりである。

なお、各請求人から提出のあった請求書は、同一内容であることから、一括して扱うこととした。

請求書の概要(請求の趣旨)

(1)
監査請求の趣旨

千葉県知事が、千葉県都市部住宅課職員をして千葉県住宅供給公社に違法に貸付支出した、又、支出しようとしている金員に対して、前者は貸付金の返還請求、後者は、支出差し止め措置を求める請求

(2)
監査請求の経緯と要旨
 平成15年9月の千葉県議会は、公社への貸付金議案予算額20億円を賛成多数で可決承認した。

千葉県知事は、この予算執行について議会の承認が得られたとして、千葉県都市部住宅課職員に、平成15年12月3日予算の半額10億円の金員を、公社に支出を命じ、千葉県都市部住宅課職員に執行支出させた。

 前述の支出執行して間もない平成16年2月4日、請求人等は、事実上の倒産である公社特定調停の新聞報道に接し、前述の貸付金が戻らない可能性が大であると判断した。

公社の乱脈経営は、既に先の知事監査請求に対応する監査結果報告で十分明らかにされており、今日の状態は、誰が判断しても倒産状態にある事に異論ある筈がない。にも係わらず経営内容無視の貸付執行は、迂回補助金支出の転化に他ならず、迂回予算提出は、千葉県議会提案趣旨を欺き、県税詐取に匹敵する重大な違法、背信行為と言っても過言ではない。

(3)
監査請求人等の請求理由

因って、公社は、財務内容を全面公開する事なくして、貸付金、補助金等を受ける資格は無い。又、千葉県も財務内容の確認なくして、貸付金、補助金等の支出する事は、千葉県が県税使途管理権を放棄すると言う法令違反を重ねる事になる。ここに、請求人等は、地方自治法第242条第1項の規定による、千葉県知事、及び都市部住宅課職員に対して、貸付金の返還請求、貸付予定行為を差し止める緊急勧告を求めるため、別紙事実証明書を添え、住民監査請求による必要な措置を請求するものです。

請求の受理

平成16年3月23日に、本件請求について地方自治法(昭和22年法律第67号。以下「法」という。)第242号第1項に定める要件に適合しているか審査を行った結果、同項所定の要件を備えているものと認め、これを受理した。

請求人からの証拠の提出及び陳述

平成16年4月7日に、請求人に対して法第242条第6項の規定による証拠の提出及び陳述の機会を設けたところ、請求人は新たな証拠を提出するとともに、請求の要旨に係る補足説明として、次のような主張を行った。

《陳述における主な主張(要旨)》
(1) 幕張第3期賃貸住宅整備事業(以下「本件事業」という。)は、第1期及び第2期の状況から見ても、「住宅の不足の著しい地域で」という地方住宅供給公社法(昭和40年法律第124号 以下「公社法」という。)第1条の目的に反し違法又は不当である。

(2)  本件事業に対する貸付け(以下「本件貸付け」という。)の違法性は、返済される見込みのない公社への貸付けであるところから、実質的に補助金に等しい。故に、歳出予算をその目的別に区分すべきとする法第216条に反し違法又は不当である。

また、地方公共団体の事務処理にあたっての最小の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならないという趣旨を定めた法第2条第14項及び地方財政法(昭和23年法律第109号。以下「地財法」という。)第4条にも反し違法又は不当である。

(3) 千葉県住宅供給公社(以下「公社」という。)の財務諸表は、粉飾決算であり、地方住宅供給公社会計基準第18ただし書きによれば、資産評価は時価評価がなされるべきであるのになされていない。


第3

監査の実施

監査対象事項

本件請求に係る監査対象事項については、請求書及び陳述並びに提出された資料から「本件事業に対する本件貸付けは、違法又は不当なので、支出済の10億円の返還及びこれから支出予定の残額10億円の支出差し止めを求めること」とした。

監査対象機関(以下「執行機関」という。)

本件請求に係る支出において、公社への貸付金を支出している県土整備部住宅課を監査対象機関とした。

監査等の実施期日

本件請求に関する職員調査を随時実施するとともに、執行機関に対し、平成16年4月20日に本件請求に係る意見陳述の機会を付与するとともに、同日、法第242条第4項の規定による監査を実施した。



第4

認定した事実

千葉県住宅供給公社について

(1)
設立の趣旨及び経緯

住宅を必要とする者に対して、居住環境の良好な積立分譲住宅、賃貸住宅等を供給し、県民の住生活の安定と社会福祉の増進に寄与することを目的に、昭和28年に財団法人千葉県住宅協会として発足し、公社法に基づき、昭和40年11月に千葉県住宅供給公社に改組した。基本財産1、000万円は、全額県の出資による。

(2)
事業の概要
分譲住宅事業
分譲住宅の供給実績 27、193戸(昭和31年度~平成15年度)
賃貸住宅事業
公社賃貸住宅の建設実績 1、281戸(昭和34年度~平成15年度)
住宅造成事業・宅地分譲事業
住宅造成事業 開発団地21地区
宅地分譲事業の供給実績 4、841区画(昭和31年度~平成15年度)
(3)
公社の経営改善及び県の支援策についての経緯
平成13年 8月 外部委託による経営診断の結果を受けて、公社が経営改革 計画を策定
平成14年 3月 県が千葉県行財政システム改革指針を策定(公社等外郭団 体の抜本的見直しの必要性を表明)
平成14年10月 県の委託を受けた監査法人ト-マツが千葉県公社等外郭団 体経営調査報告書を提出
(内容)
  • 純資産は約108億円の実質債務超過、借入金は約917億円で、営業収益の約9倍にあたる等、財務状況において抜本的対策が必要と指摘された。
  • 事業の必要性につき、分譲事業は公社として行う必然性が乏しいと指摘され、賃貸事業についても民間事業者と比べて不利な状況にあるとして、大いに改善を要すると指摘された。
  • 経営形態の方向性について、分譲事業について、早期に縮小・廃止の結論を出す必要があること、賃貸事業についても建物の老朽化等のリスクを抱えているので、事業を縮小し、順次民間の業者へ移管することが必要と指摘された。
平成14年12月 県が公社等外郭団体見直し方針を決定(公社に対しても、 分譲事業からの撤退・大幅な合理化等を打ち出す。)
平成15年 3月 公社において、経営改善計画骨子を策定
(内容)
  • 分譲用資産の早期処分による有利子負債の圧縮
  • 賃貸事業の強化による収益向上
  • 組織の再編、人員・給与の削減による大幅な合理化
平成14年度以降 15年度も継続して、公社、県、銀行11行及び住宅金融 公庫は、公社の借入金について、長期・低金利のものへの借換えの交渉を行ってきた。その過程において、県は、金融機関から損失補償を求められた。
平成16年 1月 公社において、経営改善計画を策定
(内容)
  • 分譲用資産の早期処分による有利子負債の圧縮
  • 賃貸事業の強化による収益向上
  • 組織、役職員数、給与等についての抜本的見直しによる大幅な合理化。子会社等についても大幅な見直し
  • 公社単独での経営再建は困難な状況のため、県及び金融機関に支援を要請
平成16年 2月 公社は、特定債務等の調整の促進のための特定調停に関す る法律(平成11年法律第158号)に基づく特定調停を東京地裁に申立て(相手方としては、銀行11行、住宅金融公庫、県の計13名)
現 在 特定調停継続中
直近の第4回調停(平成16年4月16日)では、調停委員会が委託し た公認会計士からの調査報告が提出されるとともに、平成16年3月24日付けで調停委 員会から要望されていた県による公社への当面の支援策について県から説明がなされた。
今後、事業再生の方法及び弁済計画について具体的に話し合いが行われていくこととなる。
(4)
公社における合理化の進捗状況
  • 公社の経営完全計画による合理化計画では、
    平成14年度 常勤役員削減数0、職員削減数11名で、削減効果7千万円
    平成15年度 常勤役員削減数2名、職員削減数36名で、削減効果3億5千万円としていたが、
  • 平成16年4月1日現在の進捗状況をみると、
    平成14年度 常勤役員削減数0、職員削減数11名で、予定数と同一であるが、削減効果は1億1、500万円
    平成15年度 常勤役員削減数2名、職員削減数52名で、削減効果5億1千万円となっている。

幕張賃貸住宅建設事業について

(1)
幕張第1期賃貸住宅(幕張ベイタウンパティオス9番街)
①建設期間 平成6年3月~平成7年10月
②入居開始 平成7年12月
③戸  数 115戸
④平均家賃
(最多間取り)
132,900円(2LDK)
⑤事業費 約37億9,000万円
⑥入居状況 87.8%(H16.3時点)
(2)
幕張第2期賃貸住宅(幕張ベイタウンパティオス13番街)
①建設期間 平成8年9月~平成10年2月
②入居開始 平成10年3月
③戸  数 115戸
④平均家賃
(最多間取り)
131,300円(3LDK)
⑤事業費 約34億4,000万円
⑥入居状況 96.5%(H16.3時点)
(3)
幕張第3期賃貸住宅(幕張ベイタウンパティオス14番街)
①建設期間 平成14年12月~平成16年3月
②入居開始 平成16年4月
③戸  数 110戸
④平均家賃
(最多間取り)
139,100円(予定)(3LDK)
⑤事業費 約25億2,259万円
(内訳)
住宅市街地整備総合支援事業補助金(国1/2、県1/2)
13年度 5,000万円
14年度 5,200万円
15年度 2億8,898万円
21世紀都市居住緊急促進事業費補助金(国)
県からの貸付 20億円(本件貸付け)
自己資金 4,667万3千円
⑥入居状況 85%(平成16年4月時点)
⑦採算性
 の試算
今後30年間の収支予測として
経常収入 4,988,755千円
家賃収入 4,655,059千円
稼働率 (1年) 63%
  (2年~10年) 85%
  (11年~20年) 85%
  (21年~) 85%
駐車場収入 333,696千円
駐車場単価 10,000円
稼働率 (1年) 63%
  (2年~10年) 85%
  (11年~20年) 85%
  (21年~) 85%
経常支出 2,850,782千円
市中借入元利返済 160,980千円
県借入元利返済 808,080千円
権利金利子相当額 135,925千円
公社事務費 373,227千円
固定資産税 426,250千円
都市計画税 99,630千円
火災保険料 15,030千円
修繕費 673,200千円
地代相当額 158,460千円
収支計算差額 2,137,973千円

耐用年数については、平成10年4月1日以降、減価償却資産の耐用年数に関する省令(昭和40年3月31日 大蔵省令第15号)では60年から47年に改正されているが、公営住宅施行令(昭和26年6月30日 政令第240号)第12条によれば、耐火構造の住宅の耐用年限が70年とされているところであり、償還期間を幕張第1期の場合と同様に60年とした。

修繕費については、幕張第1期の実績等を考慮して、必要額を算定した。

(4)
幕張新都心整備地区における公社の役割

本件事業の位置する幕張新都心住宅地区は、千葉県企業庁の「幕張新都心住宅事業計画」のもと、新たな街づくりとして、埋立地に、計画面積約84ha、計画戸数約8、900戸、計画人口約26、000人の新たな都市機能重視の快適な居住環境の創出を行ってきている地域である。ここにおける公社の役割は、良質な住宅供給という県の住宅政策のもと、街づくりの一翼を担うという点にある。

このことは、公社法、公社定款及び国の住宅市街地整備総合支援事業制度要綱における目的にも適っている。

本件貸付けについて

(1)
予算措置

平成15年度補正予算(9月定例県議会)10月19日議決

(2)
貸付契約

貸付契約について平成15年11月11日決裁

決裁に用
いた資料
契約書(案)、公社の財務諸表、本件事業の収支見込
貸付金額 20億円
貸付時期 平成15年12月に10億円を、工事費の出来高払いに対応すため貸付ける。
平成16年3月に10億円を、工事費の完了に伴う支払いに対応するために貸付ける。
貸付期間 貸付けた日の属する年度から60年間
利  息 貸付利率 年0.02%
償  還 貸付けた日の属する年度から10年間は据置きとし、据置期間満了後50年間の元金均等償還とする。
担  保 貸付に係る建物を担保とする。
契約日 平成15年11月26日
(3)
貸付金の支出

平成15年12月3日に10億円を支出

残額10億円は、公社の行う最終の請負代金の支払いに合わせて貸付けることとしたため、現在まで支出されていない。

(4)
貸付の経緯

当初は、住宅金融公庫からの借入を予定していたが、住宅金融公庫を含む金融機関と、公社の有利子債務についての支援策に関して協議中であったため、住宅金融公庫から資金調達が困難となった。

かかる状況のもと、工事は平成14年12月から進行しており、工事費支払いが滞ると、幕張地区における街づくりそのもの及び本件事業の継続に支障が生じるとともに、公社の出資者である県の信用にも係わることから、県は貸付けを行ったものである。

(5)
議会における補正予算審議の状況
  • 知事所信表明において、本件貸付けついて説明した。
  • 本会議における本件貸付の必要性の質問に対して、知事は、行政改革の方針により、公社は賃貸事業に規模縮小し存続させることが決まっており、今後賃貸事業において役割を果たしていく必要がある。現在入居している人のことも考慮しなければならないなどと答弁している。
  • 都市水道常任委員会及び本会議において、それぞれ審議のうえ可決承認された。

 

全国の市民オンブズマン

おおいた市民オンブズマン

 

弘前市民オンブズパーソン

徳島県オンブズマン