柏市役所職員厚生組合問題

2000年9月
信太忠二



今春、私宛に市内居住の一市民より、柏市役所職員厚生組合の内容に関する資料の一部と、その市民なりに考えられた問題点が記入された文書が届けられました。

私はさっそく当事者と連絡・面会、諸点に及んで教示を受け、3月23日に公文書公開条例に基づき、関係する情報の公開を請求、市は「部分」公開の決定を通知、以降3月30日、5月9日、7月11日、8月11日、8月25日、9月4日、9月12日(石蔵さん、三田村さんも)、9月13日、9月22日、人事課の担当者と面会、公開決定の部分について関係書類の閲覧を請求、取り敢えず以下の「様な」情報、所感を得ましたので報告します。



柏市役所職員厚生組合関係をめぐる現状と問題点



当該組合は、33年ほど前に組織され、市長、助役、収入役、教育長、水道事業管理者、常勤の監査委員、市の職員等、約2500名をもって組織され、組合長は歴代、助役が歴任されており平成4年度には、当時、助役であった本多現市長が就任していた。

厚生組合、それは「市長・職員みな身内、身内同士のなあなあ組合、不況・首切り・リストラは別世界、市民には見えない知る由もない場所で、親方日の丸お手盛り予算」のたぐい、と云いたくもなるもの。


当然のことではあるが、市民は市の職員が独自に、あるいは相互に資金を出し合い共済活動、厚生活動等をする事は自由であり、とやかく言う立場にはない。

然し、市民の納税によるこれだけの金額が厚生組合活動に支出され、市民に明らかにされずにいる事については、黙視するわけには行かない。

しかも、情報公開制度に基づいて請求人が理解を深めるため関係資料の公開と説明を求めているのに、担当者は資料の出し渋り、「虚偽まがいの説明」に無駄な時間を費やさざるを得なかったのは、きわめて遺憾な事でもあった。


同組合の平成3年度以降の決算に見る、組合員の掛け金と市の助成金
年 度 収入済み額中の組合員の掛け金
受け取り賃金×3/1000(現在)
収入済み額中の市助成金
支払い賃金×7/1000(現在)
平成3年 2754万4000円 7939万0294円
平成4年 2641万4654円 8800万6516円
平成5年 2792万7859円 9304万2097円
平成6年 2913万5002円 9706万1509円
平成7年 2993万6833円 9974万5832円
平成8年 3056万7725円 1億0184万3655円
平成9年 3144万6412円 1億0477万9701円
平成10年 3165万2691円 9490万5655円
平成11年 3192万1646円 8508万1732円


市の補助金・助成金の中で特定団体に、恒常的にこうした高額の金額が支出されている状況は、余り無いようである。

にもかかわらず、市が提出した平成5年度~9年度に至る「補助金一覧」には記載されていない様である。

担当者は、市より受けているのは「助成金」であって補助金ではない、と主張、しかし前期補助金一覧には一部記載されいる事を説明、市民が市によって公開された情報について質しているのに、こうした無駄な論争をしなければならないのは残念の感。

担当者は、組合に対する市助成金は議会を通っているからと、強調していたが。

なお、同組合の会計決算資料(平成3年~11年)によると、各年度毎の総収入額中に占める市の助成金の割合は、上記年度において50%を越えているようである。


厚生組合の主たる事業は、同組合の規約によれば

福利厚生事業
相互給付
貸し付け事業
年金事業

となっているが、予算・決算等の諸資料、記載された金額に検討を加えると「職員会館建設等積立基金」なる項目に目を止めざるを得ない。

取り敢えず此の場では、年金事業と職員会館建設等積立基金関連で市側との「やりとり」の経過について述べると


組合独自の年金事業について市側の説明では、職員の退職後に給付する年金事業は組合員の掛け金によって賄われており、助成金による負担はない、との事であった。

私からは、それは当然であり、もしも私的年金の給付が、額のいかんを問わず公的負担を伴う場合には、事前にその情報を市民に公開、或いは議会での検討を求めるなどの社会的合意手続が求められる時代である、事を強調。


そこで、平成3年~11年に至る柏市役所職員厚生組合年金事業特別会計決算の内容に検討を加えてみると、組合員の掛け金は給与の7/1000でその事業経過は

年 度 収 入 支 出 繰越金
平成3年 4837万7568円 4606万6582円 231万0986円
平成4年 6392万2506円 6164万1882円 228万0626円
平成5年 6742万3006円 6522万5413円 219万7593円
平成6年 7014万3301円 6826万7102円 187万6199円
平成7年 7169万2355円 7074万0702円 95万1653円
平成8年 8223万0617円 8207万5501円 15万5116円

 この8年の決算表によると、繰入金(説明欄に出所の記載なし)収入済み額として1000万円が計上されており、「推定」では職員会館建設等積立基金からでは、と。

つまり、掛け金のみでは年金財政が赤字に転落、そこで考えられた措置とも、以降9~11年度までは明確に職員会館建設等積立基金から1000万円繰り入れとして記載。担当者は私に「虚偽の」言明をして貫き通そうとした。

平成9年 8349万2104円 8270万6074円 78万6030円
平成10年 8460万3193円 8114万6409円 345万6784円
平成11年 8790万5701円 8504万3478円 286万2223円


前記、年金事業特別会計決算の中で「職員会館建設等積立基金」なるものが記載されており、その存在、会館構想等について質問したものの、否定・不明の言を述べるのみで要領を得ず、やむを得ず資料を根拠に数度の質問、結果の答えは、場所・規模・予算等は具体化していないとの事、資料上によれば平成3年度いこう前記助成金額から下記の様に会館建設積立金として処理、その利子額を含めて記載すると

年度 職員会館等積立基金 積立基金の利子
平成3年 1850万0000円  
平成4年 2000万0000円 75万4800円
平成5年 3000万0000円 116万1995円
平成6年 3000万0000円 132万3836円
平成7年 3500万0000円 187万7157円
平成8年 3000万0000円 105万3552円
平成9年 3500万0000円 84万0065円
平成10年 2500万0000円 143万4147円
平成11年 2500万0000円 77万3741円
2億4850万0000円


上記積み立て基金の一部4000万円は、すでに年金事業に繰り入れられ、いわゆる「赤字補填」とも云われる処理財源として機能しているのでは、と考えられる。

もっとも、担当職員は予算項目上、職員会館建設「等」積立基金であり、「等」が記載されているのは会館建設に限定した予算ではない、問題ないのでは、とも。

前記「補助金・助成金」の文言を含めて、こうした発言はいかにも「役人(国)」「公吏(地方)」らしき発言、一般市民に対し上位者と思い込んでいるからでは。一部小説では「小役人の習性」とも。


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私は前記の様に民間工場労働者の出身、理由があって関係法に依り、在籍の団体推薦で、ある省庁関係の審議会委員二期、審査会参与として18年(月に4日は定例の審理日、慣例として私の審理出席は2日)、身分はいづれも非常勤の国家公務員、発言は自由、審議・審理時にキャリア官僚、使用者側・中立の一部委員から同じ様な発言を経験、その都度に論争、対応する為に身につけたのは、会議当日に提示する文書、見解、発言に際しては事前には万全の準備を。そして出来ればテープ(録音機)の持ち込みであった。


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いずれにしても、市職員厚生組合に対する市助成金は議会を通ったからとは言え、使用目的、使用内容は納税者市民に知らされず、市税から職員厚生組合の管理下に置かれ、当初の目的とは異なる「恣意的流用」とも云われかねない状況に対しては、きわめて遺憾な事と言わざるを得ない。



かつて、隣接する市の市長が「市役所は市民の役に立つ所」と解説した事があったが、どうも柏市役所の常識は、普通の市民、納税者には「なんとも理解出来ない事の多かりき役所」とも、次回はオンブズマンチ-ムをつくって福利厚生、貸し付け、相互給付の実態に目を注ぐことなども、考えたいもの。

 

2001年1月11日

 

柏市職員厚生組合が年金制度を設けた経過及び同年金支払が困難となり、職員会館等建設基金より、流用に至った際の経過に関する文書を、非開示処分した理由説明書に対する反論、意見の要旨



柏市根戸1226-10
信太 忠二



申立て人は2000年3月23日、柏市職員厚生組合の所在、活動、事業内容等について知るべく柏市長に対し厚生組合負担金の支出の内訳が理解出来る資料、他2点(本件外であり省略)を得るべく公文書公開請求をした。

上記請求に対し柏市長は、4月6日付けで公文書部分公開決定通知書をもって平成10年度の柏市役所職員厚生組合負担金に係る支出負担行為兼支出命令書(控)については公開。

平成10年度における柏市役所職員厚生組合の支出内訳が理解できる資料については非公開、理由は当該文書は市長が管理しておらず条例第2条第2項に規定する公文書に該当しないため、と記載している。

申立て人は、その後平成3年~12年に至る同組合の会計状況記載文書から、組合の一般会計財務が、組合員給与の3/1000、市の財務負担7/1000で維持されている事(いずれも現行負担割合)、次いで同組合規約第46条による年金事業の財政は、第52条により給料月7/1000を充てる、つまり年金事業財政は組合員の掛け金のみに依るものとなっているのに、平成8年度いこう年金財源不足におちいり一般会計より流用されている事を知るに至り、本件関係文書の開示請求、不服申し立てにいたったものである。



理由説明書1記載の「開示請求のあった公文書」について、申立て人は以下の様な趣旨によるものである。

申立て人は、かつて柏地区労働組合協議会議長時に助成金を受けるに当って、総会提出の使用内訳(予定も含めて)記載の決算、予算書類を提出し、疑問点に答える等の説明をした経過がある(当時の説明では、助成金は公金支出であり、使途目的に反しない様に、もし反する事があれば返還を求める場合もある、との説明を受け支出を証明する書類を持参のうえ助成金申請手続きをした)。

現在でも各団体等の補助金、補給金、助成金支出に当って決算、予算関係の書類を提出させた上で支出行為にいたっているようであり、厚生組合補助金についても当然こうした支出手続きがなされている事と考え、同組合に対する補助金支出に当っての関係資料公開手続きをした。




10数回に及ぶ「市役所通い」の結果、ようやく平成3年度以降~12年度にいたる柏市職員厚生組合代議員会の資料(議案書)を入手した。

申し立て人が問題視した点はいくつかあるが驚いたのは、前記組合の「私的年金」事業が平成8年度いこう財政破綻をし、その穴埋めにより市よりの助成金が使用され、現在に至っている事である。

柏市補助金等交付規則及び申し立て人の推定ではあるものの、市は同組合に対する助成金の支出に当っては他の団体と同様に関係資料の提出を求め、交付申請の記載内容に違約した理由、経過について説明等を当然求め検討した筈である。

申し立て人が求めているのはこの、当然提出を求めたであろう、また当然提出をしたであろう関係資料の公開なのである。

もっとも、市から支出される「支出金の名称」について、申し立て人は補助金と言ったら「助成金であると強弁」次に「交付金」と訂正、しかしなぜか組合代議員会資料は「市助成金」と記載、従って「柏市補助金等交付規則(本規則第一条の趣旨にも交付金の名称はない)の適用関係は無い」もの、との立場であれば別である。

しかし、公金支出がたとえ「柏市長も一組合員」である厚生組合だからと言って、支出要件の検討無しに野放し・無原則では無い筈である。




理由説明書は2に於いて、要旨「同組合は本市の組織、職務権限等に直接は関係なく運営される本旨とは別の団体である。」としているが

まず、申し立て人も「本旨とは別の団体である」との記載部分、つまり柏市と職員厚生組合は「助成金若しくは交付金の支出(受け入れ)関係にあるものの」別の団体である事において異論はない。

が、本件厚生組合の運営、日常業務内容等について知るべく、10数回に及んで市役所行った経過中に何れも対応したのは市人事課の畔上職員、鬼沢職員であり、二人以外の対応は無い。

申し立て人の方から特別の指定も無いのに、市側から市職員の勤務関係条例で規定されている「通常」執務時間中に、二人が或いは一人の職員が対応している事実と、「同組合と市の組織、職務権限等に直接は関係なく運営される本市とは別の団体」である、との規定付け、間にはどの様に見ても乖離がある様に思われてならないのである。

申し立て人は、市側の「本市とは別の団体である」のであれば、前記の様になぜ市職員が対応してくるのか、と言う事である。

柏市役所職員厚生組合規約は、同組合の役員選出方法について第9条で、「組合長は、柏市助役事務所管規則(平成8年柏市規則第28号)に基づき、総務部の事務を所轄する助役の職にある者をもって充てる。」と規定している事との関係はどう説明するのか明らかにしない事には申し立て人は了承出来ないものである。

組合規約同第9条で役員について組合長は助役、副組合長は人事主管部長及び職員団体代表、理事14名、以下代議員、監事等について規定についても同様に問題視しないわけにはいかない。

組合職員について規約第12条に於いて、「この組合は、次に掲げる職員の区分に応じ、それぞれに当該各号に定める数の職員を置く。」として

(1) 事務長 1名
(2) 書記 若干名
(3) 事務長は、人事主管課長の職にある者とする。
(4) 書記は、人事主管課の中から組合長が指名する。
職員の掌務として第13条は、「事務長は、組合長の命を受けて組合事務を掌理し、書記を指揮監督する。
 2 書記は、事務長の命を受けて組合事務に従事する。

 

以上からして「同組合は本市の組織、職務権限等に直接は関係なく運営される団体」との規定付けは了承出来ない。




理由説明書は3において「本市の厚生制度について」として地方公務員法第42条により、以下云々と述べている様であるが、本件について申し立て人が問題にしているのは組合に対する市よりの助成金交付手続き、金額決定に至るプロセス、助成金交付後の監督状況等について納税者として知るべく条例に基づいて情報を求めて「10数回の市役所訪問」をしているのに答え切れずにいる、ことなのである。

もっとも別件、同厚生組合に係わる開示請求について、市側より1月4日付けで別紙公文書部分開示決定通知書の送付があり、1月15日開示の予定である。

通知書には公文書の内容を項目整理したものが記載されており、その中で(4)~(7)の部分には本件不服申し立て内容に関係し、期待に応える事が有り得るのでは、と関心を寄せている処である。




なお念のためではあるが申し立て人は、市の厚生制度の基本部分、あるいは市の職員が独自、相互に資金を出し合い市職員の執務とは無関係に、あるいは公費より事務費(通信、連絡などの費用)等の支出もなく、共済活動、厚生活動を、する限りに於いてそれは自由であり、とやかく言う立場にはない事は当然である。




添付資料は、市人事課職員より提出があった文書より、申し立て人が抜粋、整理、作成したものである。



朝日新聞 2001年(平成13年)4月19日



柏市の厚生組合 市民が監査請求



職員年金に税金投入



柏市職員のほぼ全員が加入する「柏市役所職員厚生組合」(組合長・高野晴夫助役、2550人)で、組合員の掛け金で運営することになっている私的年金事業に、市の一般会計から金が補てんされていたことが分かった。96年度からで、総額5000万円に上る。組合会計の基金を経由しているものの、「税金の不正支出」だとして、柏市民オンブズマン連絡会議の5人が18日までに、市長に返還を求める監査請求を同市監査委員に出した。

96年度から5000万円 市費含む基金を経由

 

同組合は職員のレクリエーションなど、福利厚生を図るために出来た。退職後に支給される公的年金を補完する私的年金事業は91年から始まった。組合員全員が加入しているという。

同組合の事務局になっている市人事課によると、同組合は毎年、余った予算を「職員会館建設等積立基金」に積み立てている。年金事業は96年度から給付水準を上げ、同年度から毎年1000万円、この基金から年金特別会計への補てんが始まった。

組合会計には、市一般会計の「総務費」から負担金が出ており、00年度で約7700万円が支出された。その余剰金が積み立てられた基金を年金事業の財源にするのは、「年金事業の財源には組合員の掛け金を充てる」としている組合の規約を逸脱することになる。

補てんが始まった理由について、市の担当者は「年金事業の健全な運営を維持しようとしたためではないか」と話す。組合内部の代議員会で承認を得ていたという。

関口隆明人事課長は「基金には確かに公金も含まれている。違法という認識はなかったが、改めて監査委員の判断を待ちたい」と話す。今年度以降、年金の給付額を下げるなどして、基金からの補てんを受けないように改めるという。

 

朝日新聞 2001年(平成13年)5月29日

 

柏市年金問題

 

5000万円、基金に返還を

 

監査委員が市長に意見 市民の請求は棄却

 

柏市役所職員厚生組合(組合長・高野晴夫助役、2550人)の私的年金事業に市の一般会計からの金が補てんされていた問題で、市監査委員は28日、組合会計の基金を経由して年金事業に補てんしていた約5000万円を基金に戻すよう本多晃市長に意見した、と発表した。市は応じる方針だ。市民5人が「市の一般会計からの支出は不正だ」などと市長に返還を求めていた監査請求は棄却された。

監査委員は、請求を棄却した上で「市長に対する意見」として約5000万円を今年度中に基金に返還するよう求める意見を別記した。

同組合の事務局である市人事課などによると、同組合の予算には市の一般会計から負担金が出ている。組合では毎年余った予算を「職員会館建設等積立基金」として積み立てているが、同基金から組合の年金事業に毎年1000万円ずつ補てんされていた。

しかし、組合の規約は年金事業の財源について「組合員の掛け金を充てる」としか規定していない。監査委員は、この補てん行為を規約から逸脱した行為と判断し、「市の負担金の使い方としては適正を欠く」「市民から疑惑や不信をまねく」と指摘。

本多市長は「意見をきちんと受けとめ、市民の疑惑を招くことがないように厚生組合に対する運営の適正化を指導していく」とコメントした。また市人事課は、年金の給付額を見直した上、意見通りに今年度中に約5000万円を基金に戻すとしている。