意 見 陳 述 書

 

2005年3月11日

 

原告ら訴訟代理人

 

弁 護 士  菅  野   泰

 

千葉地方裁判所 御中



  1. 私たちがこの訴訟で求めているものは、群馬県吾妻郡長野原町に建設が予定されている八ッ場ダムについて、千葉県水道局長、千葉県企業庁長、千葉県知事による利水負担金、治水負担金の支出の差止、ダム使用権設定予定者の地位の取下、及び過去1年分の支出金の返済です。

  2.  八ッ場ダムの建設計画は、1952年5月予備調査にはじまります。
     今から50年以上も前に八ッ場ダム建設計画はスタートし、1986年7月に「八ッ場ダム建設に関する基本計画」決定がなされていますが、そこでは総事業費2110億円、完成予定2000年となっていました。
     2003年11月八ッ場ダムについて、総事業費4600億円、完成予定2010年と計画が変更されました。総事業費の大幅な増大が明らかになりました。
     私たちは、50年も前に国により治水・利水上で必要だと計画された八ッ場ダムが、いまだに本体への着工もないこと自体が不思議なことですが、それはともかくとして、現在においても治水・利水上必要といえるのかについて再検討すべきであると考えています。900兆円をこえる借金をかかえて財政危機に陥っている国・地方自治体が、4600億円という巨費を投じて建設する必要があるものでしょうか。
     八ッ場ダムは利水・治水上必要がなく、自然環境からいっても将来への環境負荷が多く建設すべきでない無駄な公共事業というべきものではないでしょうか。 
     私たちのこの間の経験として、国が計画したからといって正しいものとはいえず、無駄な公共事業と批判されるものは多数に及びます。

  3. 私たちが八ッ場ダムに反対する理由は以下のものです。
    (1)  第1に八ッ場ダムには利水上の利益がありません。
     高度経済成長から低成長へ、そして持続可能な経済成長への転換、技術革新、少子化高齢化社会の到来、人口増加の停止・減少等この50年は利水上の必要性に大きな変化をもたらしているのです。
     千葉県においても、水道・工業用水道の1日最大給水数は、最近10年間増加がとまり、2002年度には合わせて約300万立方メートル/日にとどまっている。
     千葉県の保有水源は、約330万立方メートル/日であって水道用地下水44万立方メートル/日を加えると約370万立方メートル/日となり約70立方メートル/日も過剰となり、県民の税金約700億円を使って八ッ場ダムから水を確保する必要は全くありません。
    (2)  第2に八ッ場ダムには治水上の利益がありません。
     1947年9月キャサリン台風で利根川が大氾濫したことにより、その後国は洪水を防ぐために利根川の治水基準点である八斗島の基本高水流量を2万2000立方メートル/秒と設定しているのですが、あまりにも過大な基本高水流量の設定であるばかりか、八ッ場ダムは洪水を防ぐ機能を有していません。
     いまや治水は、コンクリートの塊であり自然とのサイクルを破壊するダムによらず、自然との共生のなかで治水を考えていく時代に入りました。
    (3)  第3に八ッ場ダム建設予定地は地滑りの危険があり、ダム決壊の危険があることです。
  4.  私たちは八ッ場ダム建設が国の事業であることを承知していますが、千葉県知事らはダム建設計画へ参加するか否かの決定権限を有しており、げんざい利水・治水上利益がないのに国の計画だから間違いないとしてキチンと検証をせずに参加して千葉県民の多額の税金を使うことに絶対反対です。
     千葉県が財政破綻に陥っているにもかかわらず、被告らが約700億円を無駄な八ッ場ダムに投ずることは許されないことです。
     被告らが八ッ場ダム計画へ公金を支出することは、地方自治法2条14項、地方財政法3条・4条・8条等に明らかに違反します。
     私たちは、裁判官が八ッ場ダム建設が利水・治水上必要なものであるか否か及び被告らが八ッ場ダム建設に約700億円という莫大な公金を出すことが許容されるのか否かなど本件訴訟の争点について実体審理を行い、そのうえで結論を出していただくことを希望いたします。